人間は「遊び」と「試行錯誤」によって学んできた
人間は、教えられる前に学ぶ存在です。
歴史を振り返ると、人類はまず試し、失敗し、やり直すことで環境に適応してきました。
子どもが言葉を覚えるとき、
歩けるようになるとき、
道具を使い始めるとき。
そこにマニュアルはありません。
あるのは、遊びに近い探索と試行錯誤の繰り返しです。
この「遊び」は、単なる娯楽ではなく、人間にとって最も自然な学習様式だと言えます。
「学習は行為の中で起こる」という考え方
教育学・認知科学では、学習は知識の受け取りではなく、行為の中で形成されると考えられています。
この考え方は「状況的学習(Situated Learning)」として知られています。
Lave & Wenger は、人は教室の外、実践の場に参加することで知識を身につけると論じました。
知識は「覚えるもの」ではなく、使いながら意味づけられるものだという立場です。
失敗は「学習の副産物」ではなく「学習の中核」
近年の学習科学では、失敗は避けるべきものではなく、理解を深める重要な契機だとされています。
Bransford らは、試行錯誤を伴う学習の方が、表面的な正解暗記よりも深い理解につながることを示しました。
つまり、
- うまくいかなかった理由を考える
- 別のやり方を試す
- 結果を比較する
このプロセスそのものが、学びなのです。
正解を早く出す時代は、すでに終わりつつある
現代社会では、「正しい答えを早く出す」能力は、すでにAIやシステムが担えるようになっています。
その結果、人間に求められる役割は変わりつつあります。
- 何を試すべきかを考える力
- 失敗から意味を見出す力
- そもそも何が問題なのかを定義する力
これらは、遊びや試行錯誤を通じてしか育ちません。
遊びは「非効率」ではなく「高次の学習装置」
一見すると、遊びは遠回りに見えます。しかし認知科学の視点では、遊びは極めて合理的です。
遊びの中では、
- 仮説を立て
- 行動し
- フィードバックを得て
- 行動を修正する
というサイクルが高速に回ります。
これは、科学的探究そのものです。
教育における私たちの立ち位置
私たちガリレオ・プロジェクトが重視しているのは、失敗できる学びの場を設計することです。
最初から正解を与えるのではなく、
- 自分で試し
- うまくいかず
- なぜかを考え
- もう一度挑戦する
この循環を、安心して繰り返せる環境をつくること。
STEM教育や探究型学習を通じて、子どもたちが「間違えてもいい」「試していい」という感覚を持てること。
それこそが、変化の激しい時代を生き抜くための、最も強い学習基盤だと私たちは考えています。
これからの教育に必要なもの
これからの教育に必要なのは、知識を詰め込むことではありません。
- 試す力
- 失敗から学ぶ力
- 遊びながら考え続ける力
人間は、そうやって進化してきました。そしてその性質は、AI時代になっても変わりません。
教育とは、人間が人間であり続けるための設計なのだと思います。
参考 Lave, J. & Wenger, E. (1991). Situated Learning
Bransford, J. et al. (2000). How People Learn
Brown, A. et al. (1989). Situated Cognition and the Culture of Learning
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